【まちれぽ新座】/Monthly JAZZ Selection Vol.5 ミゲル・セノーン Miguel Zenon


TOP > Monthly Jazz Selection > Monthly Jazz Vol.5

ジャズ喫茶BUNCA

ジャズ喫茶BUNCA

最新鋭ラテンジャズで、この夏をもっと熱く!
Miguel Zenon「Oye!!!」(2013)

Miguel Zenon(1976〜) & Rhythm Collective/ Oye!!!
【プレイヤー】
Miguel Zenon (as)、Aldemar Valentin (b)、Tony Escapa (ds)、Reynaldo De Jesus (perc)
【曲 目】
①Oye!!! (Intro)  ②Oye Como Va  ③El Necio  ④Hypnotized  ⑤JOS Nigeria  ⑥Double Edge  ⑦The Edge (Outro)

 ミゲル・セノーン。私がこの現代最高のアルト奏者を知ったのは、第一回でご紹介したチャーリー・ヘイデンのアルバムでした。特に、反湾岸戦争と平和な世の中を求めた作品“Not In Our Name”では、先陣を切って突進し、熱狂的にうねっていく様に感動しました。彼の魅力は、つややかでコクのある音色、歌心あふれるプレイ、そして燃えたぎる熱いラテン魂にあります。

 セノーンはカリブ海に浮かぶ島、プエルトリコの出身。今までのリーダー作には、故郷で日常的に演奏されてきた伝統的な音楽に、現在進行する最先端のジャズとして新たな息吹を吹き込んでいるものが多くあります。その路線での最高傑作と言えるのが、“Esta Plana”(下部左の写真)。「プラナ」とは、タンバリンのような太鼓と歌によって成り立つ音楽。レギュラーメンバーの4人を軸に、民族的な響きをもったボーカルと打楽器をフューチャーし、実に色彩感豊かな作品に仕上げました。複雑な変拍子をもって力強く躍動するリズムの上を、熱狂的に歌いながら疾走するセノーンが圧巻です。また、経済的に疲弊する故郷プエルトリコを憂いた曲や、「蛍の光」のメロディーも引用してNYのにぎやかで混沌とした年末の雰囲気を表し、明日への新たなる決意表明を果たすなどメッセージ性も高く、作曲家、バンドリーダーとしての才能も十分に発揮しています。

 さて、本作品は「リズム・コレクティブ」という新たなバンドによる第一弾で、プエルトリコでのライブ盤。そして、なんとメンバーも全員がプエルトリコ出身です。写真を見ると同世代の若手の面々のよう。今まで中心に据えていたピアノのようなコード楽器がなく、セノーンのアルトの他は、ベース、ドラム、パーカッションというシンプルな編成です。

概して、コード楽器がないと色彩感が出にくく曲が単調になりがちですが、全くの杞憂に終わりました。
 とにかく各人の力量の高さが凄い!特にドラムの手数が多く豪快かつ躍動的な演奏は圧倒的。ベースも太く粘るようなリズムが素晴らしく、うなるようにファンクなベースラインから、ボサノヴァのギターのような響きまで出してしまう卓越したテクニック。そこに熱狂的に乱舞するパーカッションが加わり、ぞくぞくするような最高のグルーヴを生み出しています。リズム・コレクティブ(集団即興演奏)の名前は伊達じゃないです。

 そこに相変わらず何とも言えずつややかな音色で朗々と歌い、時に突進するセノーンの勇ましいソロの連続には、思わず鳥肌が立つ程です。時に全くのソロで、哀愁を漂わせてしっとりと歌い上げたかと思うと、湧き上がるリズムとともに沸点に達した凄まじい演奏を聴かせる、そのダイナミックスの広さには驚かされます。
 さらにそのリズムは、形や色合いを変幻自在に変えながら、セノーンと一体になって熱狂の渦を生み出します。ゆったりとした楽園のような曲もあり、なんとも清々しい気分に。ラストは全員が一丸となって疾走する圧倒的な演奏で幕を閉じます。ライブ盤でやや音が悪く10分前後の曲が5曲とボリュームもたっぷりですが、飽きることなく一気に聴かせてくれます。

 今年の夏はプエルトリコの熱狂と共に過ごすのはいかがでしょうか?暑さを忘れるほど熱くなれること請け合いです。

(文:S. Nakamori)

もっと聴いてみよう!ミゲル・セノーン

Esata Plana
(2009)

セノーン最高傑作!
鮮やかな伝統音楽の新解釈。

Luis Perdomo/Links
(2013)

サイド参加。スタンダード中心の
親しみやすい作品。

SF Jazz Collective
(2011)

現代NYの若手精鋭達によるS.ワンダー曲集。
野心的アレンジ、独創的オリジナル曲に注目!

ジャズ喫茶BUNCA

ジャズ喫茶BUNCA

新座市まちれぽ新座

ご感想・応援メッセージ 受付中!新座市BUNCA
このコーナー(コラム)に対するご感想やご意見・ご要望、執筆者への応援メッセージ、リクエストなど
どしどしお寄せください。いただいたコメントは掲示板で紹介してまいります。

広告