【まちれぽ新座】/Monthly JAZZ Selection Vol.27 Gonzalo Rubalcaba


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追悼!Buncaのママさん 未来につなぐ想い。
Gonzalo Rubalcaba「Charlie」(2015)

Gonzalo Rubalcaba

Gonzalo Rubalcaba/Charlie(2015)
【 プレイヤー】
Gonzalo Rubalcaba (p)、Matt Brewer(b)、Marcus Gilmore(ds)、Will Vinson(as)、
Adam Rogers(g)
【曲 目】
①First Song ②Sandino ③La Pasionaria ④Hermitage ⑤Bay City 
⑥Blue In Green ⑦Nightfall ⑧Transparence ⑨Silence

 今日紹介したいのは、ゴンサロ・ルバルカバが、師であり、盟友でもあったチャーリー・ヘイデンに捧げた追悼アルバムです。そして、まだ千代子さんが元気だった時一緒に聴き、それ以来、私の心に深く刻まれている作品でもあります。
 「ねえ、このベース誰だと思う?」と言いながら、千代子さんはこの作品をかけてくれました。それを聴いた瞬間、心から驚いた。朴訥としながら、地に深く響き渡る音色、力がみなぎるような演奏は、まさに若かりし頃のヘイデンそっくりだったのです。単なるマネといったレベルではなく、まさにヘイデンが憑依したような演奏でした。それは、人を愛し、尊敬するあたたかな気持ち。あらゆる表現を駆使して、常に「今この時」を表す姿勢。その奥深くには、音楽をもって平和を希求してきた情熱が渦巻いています。

 このベーシストは、マット・ブリュアー。太く突き刺さるような音色で、NYジャズの第一線で活躍する若手奏者の一人です。そしてその音楽全体を支えているのは、リーダーであり、キューバ出身のピアニストのルバルカバ。彼は若き頃当時祖国キューバと国交のなかったアメリカで初めて演奏し、その後ヘイデンの音楽の要となった人物です。彼は、ヘイデンが「今このとき」の世の中を表すために、第一線の若手を起用したのと同じく、同世代から現代のNYのジャズを代表する精鋭たちをそろえています。浮遊感のある演奏と独特のクールな音色のアルト奏者ウィル・ヴィンソン。ロックからヒップホップ、アヴァンギャルドまでこなすギタリスト、アダム・ロジャース。もはや「ロイ・ヘインズの孫」という肩書も不要、手数の多さと繊細さが独特の空間を生み出すドラマー、マーカス・ギルモア。彼らは一体となってヘイデンの心に寄り添うと共に、そのみずみずしい感性とほとばしるような情熱で、名曲の数々に新たな魂を宿らせています。

 冒頭はヘイデンの一世一代の名曲「ファースト・ソング」。晩年のスタン・ゲッツが、病に侵されながらも絞り出すような情熱的な歌を歌い上げた演奏など、数々の名演奏があります。ここでは、まずルバルカバの厳かなピアノに導かれ、臓腑に突き刺さるような重いブリュアーのベースが響き渡ります。続くソロも素朴で、内側から燃え盛るような秘めた情熱を感じる素晴らしい演奏。後半のルバルカバの演奏もあふれ出る想いが尽きることなく流れ出ています。

そして、全ての音が静かに静寂に染み入ったあと、ルバルカバは、再び静かに低い一音を響かせる。このたった一音に、彼らの心からの祈りがこめられています。私はこの一音を聴くたびに、胸が熱くなるのを覚えます。

 平和を希求するリベレーション・ミュージック・オーケストラの代表曲である「サンディーノ」と「ラ・パッショナリア」は、晩年のヘイデンと会って話をしたことのある私にとって、思い出深い曲です。ここでは激しさよりも秘めた情熱と浮遊感が交錯する独特の表現が印象的で、まさに彼らの真骨頂を示しています。
 4曲目からの3曲は、ヘイデンが古き良き時代のジャズを復興させるべく結成した「カルテット・ウエスト」で良く演奏された曲たち。とうとうと流れゆく時を感じさせる名曲「エルミタージュ」に、弾けるような4ビートが楽しい「ベイシティ」。一見懐古的でありながら、ソロやインタープレイは極めて現代的な演奏で、まさに日々進化し続けるジャズを体現しています。

 そして、最後は静寂に響き渡る鐘のようなピアノで幕を開ける名曲「サイレンス」。ヘイデンはこの曲について「ものごとの始まりと終わりには静寂がある。」と語っています。すべては無から生まれ、混沌の中でもがきながら成熟し、また無へと戻っていく。そうした哲学的な真理を表す曲です。私は今までヘイデン自身の演奏以上の名演を聴いたことがありませんでした。しかし、この演奏はそれを覆す。時を刻むようなピアノが繰り返される中、徐々に熱を帯び、瞬間、ふっと目の前の空間が大きく開ける。ギターとピアノの澄んだ音(ね)の豊かな響き合い。いつもクールなヴィンソンからは考えられない、切々と歌い上げる情熱的な歌。そして、空間に無限のニュアンスを満たし、次々に化学反応をおこしていくギルモアのドラム。そして一時の隆盛をほこったあと、また、無に消えていきます。

 想いは時を超えて、次の世代に引き継がれる。そして、新たな感性に磨かれ、また輝きを増していく。私も、そうした想いを繋ぎ、紡いでいくような生き方をしたい。そして、千代子さんの思い出と共に、このアルバムを大事に聴いていきたいと思う。

(文:S. Nakamori)

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