【まちれぽ新座】/Monthly JAZZ Selection Vol.3 クリスチャン・マクブライド Christian McBride


TOP > Monthly Jazz Selection > Monthly Jazz Vol.3

ジャズ喫茶BUNCA

ジャズ喫茶BUNCA

じめじめした梅雨を吹き飛ばそう!現代の正統派ハードバップ
Christian McBride「People Music」(2013)

Christian McBride(1972〜) / People Music
【プレイヤー】
Christian McBride(b)、Peter Martn(p)、Carl Allen(ds)、Steve Wilson(as,ss)、Warren Wolf(vib)、Christian Sands(p)、Ulsses Owens, Jr.(ds)
【曲 目】
①Listen To The Heroes Cry ②Fair Hope Theme ③Gang Gang ④Ms. Angelou ⑤The Movement, Revisited ⑥Unusual Suspects ⑦Dream Train ⑧New Hope’s Angel

 今回は届いたばかりの新譜をご紹介したいと思います。リーダーのクリスチャン・マクブライドは90年代から活躍するアメリカの黒人ベーシスト(1973年生まれ)。骨太で重厚な音色、バンド全体を煽り立てる力強いリズムを刻むウォーキングベースが信条です。ジャズでは他のポピュラー音楽と比べてベースの自由度が高く、旋律を奏でるソロも弾きます。中にはテクニックに任せてやたらとソロを弾きまくる人もいますが、やはり本当にいいベーシストはその本分とも言えるウォーキングが優れていなければなりません。

 彼が近年その本領を最大限に発揮したのが、新たに結成したバンド、「インサイド・ストレート」による“Kind Of Brown”という尊敬するベーシスト、レイ・ブラウンに捧げた作品(もっと聴こう!~左の写真)。ブラウンの持ち味だった一度聴けば忘れられない「鋼のタッチ」と言われた強靭なベースプレイを、マクブライドの個性を加えつつ現代に蘇らせた実に素晴らしい作品でした。気心の知れたメンバーを中心に集め、ピアノトリオにアルトサックス、さらに新生ヴィヴラフォン(注1)奏者を加えた5人編成で、伝統的なアコースティック・ジャズに新たなる鮮烈な響きを吹き込んでいました。

 同バンドの第二弾となる本作品は、ピアノのエリック・リードが抜け、代わりに若手のピーター・マーティンとクリスチャン・サンズ(3曲で参加)のピアノ、ユリシス・オーエンのドラム(3曲参加)を投入。基本的なバンドサウンドは変わりませんが、黒さがやや薄まった一方で、軽やかで爽やかな響きが加わり、比較的明るい曲が増えたこともあり陽性のパワーが外に大きく広がっていく印象が強まりました。

 オープニングはいきなり乱舞するドラム、ズシンと腹に響くベース、ピアノの躍動感に満ちたリズムから生まれる、壮大なスケールと重厚な響きに驚かされます。ズンズンと響くマクブライドのベースラインが素晴らしく、それだけでもう幸せな気分になってしまいます。

 硬質な音色で打楽器的に入った後粘るリズムに乗って軽快に歌うヴィヴラフォン、雄叫びをあげつつうねりまくるアルトサックス、波打つように躍動するピアノ、そして、マクブライドの力強く歌い上げる貫禄のベースソロと充実の演奏が続きます。
 ウルフによる3曲目は、躍動的な変拍子とクラシカルな響きすら感じさせる優雅なメロディーラインが一体となったユニークな曲。伸びやかな音色ときらびやかで魅力的なメロディーが次々に湧き出るヴィヴラフォン、哀愁と歌心に満ちたピアノソロに惹きつけられます。

 この作品の白眉は録音時間も最も長い5曲目で、激しく刻まれるリズムと警告を与えるような緊迫感に満ちたテーマがまず印象的。高速の軽快なテンポに乗って名人芸のソロが次々と繰り広げられていきます。かなり高度な技であることは間違いないのですが、それをさらっとこなしてしまう各人の力量は並大抵のものではありません。同じフレーズを繰り返すブルージーな響きを取り入れつつ次々に色合いを変えていくヴィヴラフォン、空間を埋め尽くすかのように怒涛の勢いで駆け抜けるアルトサックス、タイトでキレのいいリズムで後ろからバックアップするドラムの豪快なソロと一気に聴かせます。
その他参加メンバーの曲も数曲収録し、彩りを添えていますが、全体的な印象はがっちりと統一されています。基本となるバンドのサウンドを守りつつ、さらに進化させたマクブライドの手腕には驚くしかありません。

 マクブライドは他にも豪華ゲストの数々とデュエットを果たした“Conversations”(写真真ん中)が強烈にお薦めです。スティングとの陰影に満ちたプレイ、サルサの重鎮ピアニスト、エディ・パルミエリとの目がくらむほどの色彩感とこの上ない緊迫感が圧巻のプレイなど全編聴きどころ満載。
この機会に現代最高のベーシストの至芸を心ゆくまで味わっていただければ幸いです。

(文:S. Nakamori)

もっと聴いてみよう!クリスチャン・マクブライド

Kind Of Brown
(2009)

ほぼ同じメンバーによる第1弾。

Conversations
(2011)

極上のデュエット集!

Live at Tonic
(2006)

驚愕のジャズロックライブ3枚組。

ジャズ喫茶BUNCA

ジャズ喫茶BUNCA

新座市まちれぽ新座

ご感想・応援メッセージ 受付中!新座市BUNCA
このコーナー(コラム)に対するご感想やご意見・ご要望、執筆者への応援メッセージ、リクエストなど
どしどしお寄せください。いただいたコメントは掲示板で紹介してまいります。

広告